ぼーんぐん。ものがたり

日常の暮らしの中で感じる心持ちをつぶやきます。

「ちく満」のせいろ蕎麦

こんにちは。ぼーんぐんです。

 

「久しぶりに美味いお蕎麦を食べたい」そんな思いで大阪堺の「ちく満(ちくま)」にやってきました。

 

みなさんはお蕎麦はお好きでしょうか。

 

私の住む関西は「うどん文化」の方が圧倒的に栄えていますから「美味しい蕎麦屋はないんじゃないの」と世間で思われがちですが、実はそんなこともありません。

 

ここ大阪堺にある「ちく満」は、元禄8年(1695年)創業という老舗の蕎麦屋なんです。現存するお蕎麦屋さんとしても、京都の「本家尾張屋」、長野の「越前屋」につぐ三番目の古さなんですね。

 

私は「ちく満」にお蕎麦を食べに参りますといつも妄想してしまいます。

 

店内は歴史を感じる古い木造ですから、その佇まいの中でお蕎麦を食しますと江戸の頃にタイムスリップしてしまうのです。

 

江戸時代の髷を結った庶民が、私と同じようにこの場所「ちく満」でお蕎麦を食べていたんだと勝手に妄想してしまうのです。

 

「ちく満」のお蕎麦は創業当時のスタイルにこだわっています。

 

江戸初期の頃にはまだ小麦粉をつなぎに使ったニ八蕎麦などはありませんから、蕎麦粉100%の十割蕎麦は、そのまま茹でるとちぎれやすかったんです。ですから蒸したお蕎麦を器に移さず、そのまませいろで提供していたんですね。

 

今もその製法と提供スタイルが続けられています。

 

そんな「ちく満」も建物の老朽化には勝てません。

 

また建物自体のシロアリ被害と、毎年のように国内の地震の被害を見ていますと早急な対策を取らざるを得なくなったようです。

 

現在店舗の駐車スペースは建築資材で囲まれ、建て替え工事が始まっています。

 

実は私が今日参りましたのも、取り壊す前にもう一度歴史ある座敷でお蕎麦を頂きたいと思ったからなんです。

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工事の関係でいつもの入り口は塞がれていましたので、今日は西側の入り口へ回り込み、お店の暖簾をくぐります。

 

暖簾をくぐり廊下を進みますと、ガラス戸越しにいつもの大きな座敷が見えてきます。

 

店員さんの案内で、靴を脱いで大きな座敷にあがり指定の座布団に座ります。照明の裸電球がいい味を出してくれています。

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メニューは「せいろそば」のみです。注文は量の選択になります。大抵は女性は1斤(いっきん)か1.5斤(いっきんはん)。男性は2斤(にきん)の方が多いように思います。

 

私は1.5斤にしました。

 

混み合ってなければ注文してから5分ほどで運ばれてきます。

 

まずは熱々の出汁入り徳利が白い布巾に包まれて到着します。

 

その後、お蕎麦の入った四角い「せいろ」とその蓋の上に「薬味」と「卵」「出汁を入れるお椀」が上手に乗せられて運ばれます。

 

早速お椀に卵を割り入れ溶いてから熱々の出汁を注ぎます。せいろの蓋を開けると、モワッと湯気と共に広がる香り高い蕎麦が現れます。

 

「おぉー美味そう」

 

薬味は「青いネギ」の輪切りと「ワサビ」。必要な量を使って食べ進めます。

 

ここのお蕎麦は一度茹でてから蒸されているので、とってもふわふわです。初めて召し上がる方は今まで食べて来たせいろそばとは全く違う食べ物で不思議な感覚を持たれるでしょう。

 

「ちく満」のお蕎麦はそのふんわりした食感を味わうのです。

 

目の前に広がる湯気、ふわふわのお蕎麦、濃い目の出汁、そして歴史を感じる座敷。それらを共有し江戸へタイムスリップして楽しむお蕎麦が「ちく満」のお蕎麦なのです。

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お蕎麦が残り少なくなった頃に、さっと持ってきていただけるのは蕎麦湯の入った湯桶です。「ちく満」では、お店オリジナルの湯桶は350年前の創業当時から「かまくら」と呼ばれるようです。

 

蕎麦湯は昔から、胃腸の調子が悪い時に効くといわれ胃腸薬の代わりに飲まれていたようですね。

 

蕎麦湯を出汁の残ったお椀に入れ飲みますと、蕎麦の風味が口の中に香ばしく広がります。

 

食後のホッとする味わいです。

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みなさんも「ちく満」のお蕎麦を召し上がりませんか。江戸へタイムスリップして楽しむことが出来るお蕎麦は今だけですよ。

 

もちろん店舗が建て替わった後の「ちく満」の味も、今と同様の味わいだと思いますが、はたして新店舗になって江戸へのタイムスリップが出来るかどうか。

 

妄想癖のある私にはそこが気がかりなのです。

 

「ちく満」の場所は、戦国時代のの茶人「千利休屋敷跡」のお隣ですから、ここを目印にお探しになってくださいね。

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