こんにちは。ぼーんぐんです。
みなさんは町中華は好きですか。
何処の町にも昔からあるお店。店の佇まいも味も店主も懐かしい。時が止まったような空間がそこにはあります。
今日はそんな町中華に何年かぶりで寄ってみました。
久しぶりの客にも気安いものである。
注文すると私はドーナツ状に丸く穴の開いた鉄パイプの丸椅子に腰かけ、四人掛けのテーブルの端で料理が出てくるのを待つ。
プラスチック製のコップに入った水を一口飲みながら久しぶりの来店に懐かしく店内を見回します。
壁には年季の入ったメニュー札、色あせた昭和スターのポスター、そして天井近くに据え付けられたテレビがいつもの場所にいます。
「変わってないな」
先客は一組。
近くにお住まいの方なのか、小学生の二人の子供を連れたお母さんが二つ隣のテーブルに座っている。既に運び込まれた丼物やギョーザの類を分けて食べている。
店の奥では私が注文した天津飯を作っているのか、忙しくフライパンをコツコツ捌く音がしている。
「いいねぇこの感じ」
飲み干したプラスチック製のコップの水のお替わりを申し出ると、水を入れて冷やされたラベルの無い500mlのペットボトルの再利用容器を持ってこられた。とってもエコである。
暫くして「天津飯」がやってきた。
浅い丼に溢れんばかりの天津飯が湯気と共に目の前に運ばれる。クラブ活動を終えた男子高校生が食らいつくほどのボリュームである。
「まだまだ私も若く見える様だ」と考えながら蓮華を差し込んでいく。味は最高!フワフワ感も申し分ない。
店主は私が天津飯と悪戦苦闘していることなどお構いなし。少し手が空き暇になったからか、天井近くに据え付けられたテレビをつけた。お昼のニュースが流れてきた。
「次のニュースです。」
「信用調査会社は、実質、無利子・無担保のいわゆる”ゼロゼロ融資”の返済が本格化する中、原材料価格などの上昇も重なって資金繰りが悪化し、倒産(とうさん)が出始めていると指摘しています。」
ニュースを読み上げた後コメンテーターとキャスターのやり取りがあります。
「倒産(とうさん)がふえているんですね。」
「倒産(とうさん)の数は昨年の同じ月より47%ふえているんです」
深刻そうなテレビのニュースを聞いて、食事を終えた先客の一家が会話を始めます。
「お父さん(とうさん)が増えてんの?去年よりいっぱい?」二人の子供の内の下の男の子がお姉ちゃんに聞きます。
「ちゃうちゃう。お父さん(とうさん)の事じゃなくて倒産(とうさん)よ。」
「とうさんってなに?」男の子は今度はお母さんへ目をやる。
「倒産(とうさん)ってね会社が無くなる事よ」
「じゃあ会社が無くなるとどうなるん?」男の子の質問にお姉ちゃんもお母さんへ目をやる。
「会社が無くなるとお父さん(とうさん)は働けないから失業して家にいるのよ」
「家にいるの?なんや、やっぱりお父さん(とうさん)が増えるんやん」
「・・・」
思わず天津飯を吹き出しそうになりました。ここは大阪。至る所で面白い話が聞けます。
お腹も一杯になり笑顔で会計を済ませます。
「はい天津飯、450円ね」
「ごちそうさま」
今後も原材料価格や燃料費の高騰は続きそうです。テレビのニュースに出た倒産や廃業は決して他人事ではありません。
値上げをして生き残りにかけるか、時代に飲み込まれるか。
いずれにしても居心地の良い町中華で幸せな昼食を頂ける日はそれほど長くはないのかもしれませんね。