ぼーんぐん。ものがたり

日常の暮らしの中で感じる心持ちをつぶやきます。

妖精の作る不思議なカレー

こんにちは。ぼーんぐんです。

 


長引いた出先での商談を終え、遅めのランチを頂きました。

 


此処は大阪南森町で店舗を構える「ココペリカレー」

 


大阪駅から東に向かう1号線から少し入った雑居ビルにあるカレー屋さんです。

 


ビル横の階段から2階に上がった通路のドンつき。そこが店舗の入り口なので少し分かり辛いかもしれません。

 


昨年、食べログ2023百名店に選ばれた実績を持つお店ですから、提供されるカレーは期待できます。

 


恐るおそる入り口の扉を開いてみますと、薄暗い店内にはカウンター席が8つほど。

 


客は誰もいません。

 


洒落た照明とこだわりのインテリアが並び、大型モニターからは癒しの映像が流れています。

 


「こんにちは」

 


さらに中へ入り挨拶しますと先客をひとりみつけました。

 


L字に曲がったカウンターの一番奥の席でカレーを食べていたんです。そしてカウンターの中には男がひとり。店長か。

 


室内には似合わないサンブラスをかけた中年男がひとりでオペレーションをしています。

 


「初めての方ですか」

 


私の声に反応した男が顔を上げサングラスの奥から私を見つめ問いかけてきます。

 


肘まで捲り上げたセーターの袖口から覗く腕には目立つタツゥー。ひょっとしてヤバいお店なのかと頭をよぎります。

 


「初めての方はこちらまでどうぞ。まず当店のカレーの説明を聞いてもらいます。」

 


結構ですと退店する勇気もないので、言われるがままに案内された店の奥に進みます。

 


席はスポットライトの当たるカウンターの角。有無を言わせず男が差し出したポータブル機器で動画の視聴を促されます。

 


「ここを押してください」

 


コートを脱いで着席したあと画面操作をします。三角の再生ボタンを押してスタート。

 


「ココペリカレーへようこそ。ここのカレーの特徴は、‥‥うんだらかんだら」

 


それから数分。男のカレーに対する情熱が迸ります。

 


カレー食材へのこだわりから始まり、今では多数の取材をうけ世間に認められていることまで。延々アピールが続きます。

 


でも正直内容など一切私には入って来ません。

 


だってそうですよね。私はお昼にカレーを食べに来ただけ。それなのに一体これから何が始まるのやら。不安だけが募っていきます。

 


延々続く動画は途中で停止されドリンクの注文を行うことになります。

 


さらに動画は進み全ての視聴後に、やっとカレーの注文をする事になりました。

 


ヤレヤレ。

 


注文を受けると男は早速調理に取り掛かります。でもこれで安心してはいけません。

 


動画から解放されたと思ったのも束の間。料理提供まではおよそ10分かかると告げられ、待っている間退屈しない様に追加でカレーの記事を読む様にとスマホを渡されることに‥

 


ギャー!もういい加減自由にさせてくれ。

 


やがて出て来たカレーは写真の通り。インパクトある盛り付けと色彩感覚に感心します。

 

 

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ところで味は?

 


はてな。不思議な事にそれまでの情報が多過ぎたのでしょう。さっぱり覚えていません。

 


どんな味だったんだろうかと。

 


後から想像するに、私が全て食べ切ったのだから極端な味付けではなかったんだろうということ。

 


また夜まで腹が空かなかったことから量も適量だったのでしょう。

 


そして大事なことは、食後に気分がハイになったり落ち込んだりしていないこと。

 


"そちら"の類は混入されてなかったんでしょう。

 


店も男も独特の雰囲気なので最後まで何を食べさせられるのかと心配で気を許してなかったんですね。

 


あぁ無事で良かった。

 


不思議な空間で食べた不思議なカレーは、夢か幻だったのかもしれません。明日出かけてみたら店舗の影も形もなかったりして。

 


まさかね。

 


店名の指す"ココペリ"を調べてみると、キリギリスの神様のことだと知りました。

 


"ココペリ"は一度笛を吹くと地面から緑が吹き出し、花が咲き乱れるんだとか。

 


また木々は生い茂り、花粉は風に舞うといいます。さらに動物たちに至っては次々と子供を産み落とし、子供達は強く逞しく成長するとも言います。

 


生命誕生と繁栄を司る精霊だと信じられてるんですね。

 


そうなのか。

 


実はあの男、精霊の化身なのかもしれません。

 


そう思って振り返りますと合点がいきます。どおりでオーラも会話もまるで常人と違っていましたから。

 


どんな風にかって?

 


例えば会話。思い返すと男は時折呪文を唱えてました。

 


ドリンクの注文をする際に"ラッシー"を頼むとすかさず男はこう呪文を唱えます。

 


「‥名犬ではありませんけど‥」

 


カレーを食べ終わった際に男がこう尋ねて来ます。

 


「‥からさは‥」

 


カレーの辛さは丁度良かったですよと答えると、物足りなさそうに私を見つめて、こう呪文を唱えます。

 


「‥としあき‥」

 


そして、食事を終えて精算し店を出ようとした際も男はこう話しかけて来ます。

 


「‥忘れ物はないですか‥」

 


問いに答えようとすると、呪文が続いていました。

 


「‥見つけにくいものですか‥」

 


 


如何でしたか。

 


不思議なココペリカレーでの出来事を信じられますか。たぶん本当のことです。

 


みなさんも妖精にご興味を持たれましたら是非尋ねてみる事をお勧めします。

 


男の正体がココペリ妖精の化身か、ただの昭和の親父なのか。責任は持ちませんがね。